遺産相続トラブルその前に!~遺言書の保管方法~

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遺言書の種類には自筆の遺言書、公正証書遺言、秘密証書遺言の3種類があります。この中で主なものは自筆の遺言書と公正証書遺言ですが、この2つの遺言書の保管方法についてまとめました。

自筆の遺言書

(1) 各種手続には原本が必要~原本を紛失しないように~

 自筆の遺言書に基づいて遺産を分配する場合、必ず原本が必要です。

 例えば、不動産の移転登記は法務局で申請し、預金の払戻しは銀行で手続をすることになりますが、遺言書の原本を提示しないと手続には応じてくれません。遺言書のコピーがあれば、遺言書の原本が存在していたこと自体は確実といえますが、原本でなければどの機関も手続には応じてはくれないのです。

 ですので、自筆の遺言書の原本を火事で燃やしてしまったり、紛失してしまったりすることがないよう、注意する必要があります。

(2) 保管場所~紛失の危険、誰かに破棄されてしまう危険、存在自体を知られない危険~

 では、遺言書紛失のおそれがないように金庫に保管しておけばいいかというと、そうとも限りません。

 例えば、真っ先に金庫を開けて遺言書を発見した相続人の1人が、遺言書の内容が自分にとって不利なことを知って、遺言書を破棄してしまうおそれがあります。

 では、破棄されないよう、こっそり隠しておけばいいかというと、これもお勧めできません。  遺言書は、その存在に誰も気付かなければ、遺言書のとおりに遺産が分配されなくなってしまいます。また、隠し場所を信頼できる人に伝えていたとしても、それが自宅であれば火事で消滅してしまう危険があります。

 遺言書の管理を信頼している人、または遺言書によってメリットを受ける人(例えば、法定相続分よりも遺産を多くもらえる人、法定相続人ではないが遺言書で遺産をもらえる人)に預けておくという方法もありますが、預かった人が紛失してしまう危険も否定できません。

 そこで、次の「法務局に預ける制度」を利用することをお勧めします。

(3) 法務局に預ける制度

 2020年7月10日からは、法務局に自筆の遺言書を預かってもらえる制度が始まります。この制度を利用すれば、火事や紛失の危険はほぼないといっていいでしょう。

 ただし、この制度を利用する場合も、遺言書によってメリットを受ける人が、「法務局に保管されている」という事実に気付かないと、やはり、遺言書の内容が実行されないという問題が残ります。  信頼している人や、遺言書によってメリットを受ける人には、生前に「遺言書をどこどこの法務局に預けてある」ということを必ず伝えておく必要があります。

公正証書遺言

(1) 原本は公証役場に保管される

 公正証書遺言の原本(遺言者、証人2名、公証人全員が手書きで署名・押印したもの)は、公証役場に保管されます。

 保管期間は、公証人法施行規則において20年とされています。遺言者を作成された方が若い方の場合は、20年よりももっと長い期間(その方が生存しておられると思われる期間)保管されます。

 このように原本は公証役場に保管されるので、遺言者に対しては、写し(「正本」「謄本」といいます。)が渡されます。

 正本や謄本は、紛失しても、公証役場に依頼すれば、再発行してもらうことができます。

(2) 正本や謄本の保管方法

 このように、公正証書遺言の正本や謄本は再発行してもらうことができるので、紛失を防ぐという観点からは、保管場所にそれほど神経質にならなくていいようにも思われます。

 ただし、遺言者が亡くなられた後、公正証書遺言の存在に誰も気付かなければ、遺言書のとおりに遺産が分配されなくなってしまいます。または、相続人の1人が公正証書遺言の存在に気付いても、その内容が自分にとって不利であれば、他の相続人に黙っているという可能性もあります。

 ですので、先ほどの自筆の遺言書と同様、信頼している人、または遺言書があることでメリットを受ける人に、公正証書遺言がある旨を伝え、場合によっては謄本や正本を預けておいた方がいいでしょう。

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