遺産相続トラブルその前に!~認知症の父の遺言書を書く時期~
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「父は認知症だった!遺言書は無効だ!」と訴えられてしまった。
相続に関し、次のような認知症と遺言に関するトラブルのご相談を受けることがあります。
「先日、父が亡くなりました。母は数年前に死亡しており、相続人は私(長男)と弟(次男)だけです。
父は生前、遺言書を書いてくれており、【私の相続分を弟よりも多くする】という内容だったのですが、弟から、『父は認知症だったから、遺言書は無効だ!』と裁判で訴えられてしまいました。
たしかに、父は亡くなる2~3年前から認知症の症状が出始め、亡くなる直前の1年間くらいはかなりボケていました。
しかし、父は認知症になる前から、私に対して、『次男はギャンブル好きで借金の尻ぬぐいをしてやったことが何度もある。あいつの相続分は少なくていいはずだ。』としょっちゅう嘆いていました。
父の認知症が進行してきたために、亡くなる数か月前に私から父に頼んで遺言書を書いてもらったのですが、無理矢理書かせたのではなく、父の以前からの希望を反映させたものでした。
公証人に自宅に来てもらって公正証書遺言を作成してもらいました。公証人が作ってくれたのだから、無効だなどと訴えられるのは心外です。」
公正証書遺言が無効になることはあるのか(認知症の方の場合)
遺言書を作成したまさにその日の時点で、お父様に遺言内容やその効果を理解する能力がなかったのであれば、いくら認知症になる前の意思を反映させたものであったとしても、お父様の遺言書は無効となります。
そして、「公正証書遺言であれば無効になることは絶対にない」ということはありません。
認知症だったお父様に、遺言書の内容を理解する能力があったのかについては、病院のカルテ、医師の意見、遺言書が書かれた状況など、様々な要素から裁判官が判断します。
公証人は、受け答えが全くできないほど認知症が進んでいる方の依頼は断るでしょう。しかし、公証人には医師の診断書を確認する義務まではありませんので、公証人の「理解力はありそうだ」という判断が、後の裁判官の判断と一致するとは限らないのです。
この事例から学ぶ、相続トラブル予防のための事前準備
事例のような相続トラブルを予防するためには、以下のポイントをおさえて準備することが肝要です。
(1)遺言書作成は早めに
本事例では、お父様は認知症になる前から「次男の相続分は少なくていい。」と何度も話していました。
そのようなお気持ちだったのであれば、早く遺言書を作っておけばよかったのに、ついつい先延ばしにし、認知症が進行してしまってから長男が慌てて作成させました。
認知症の方が作成した遺言書が全て無効というわけではありませんが、認知症が進行すればするほど、裁判で「無効」と判断されてしまう可能性も高まるわけです。
もっと極端な例を挙げれば、認知症になる前でも、交通事故などで急死してしまい、「作成する暇がまったくなかった」ということもあり得ます。
遺言書は、手遅れになる前の早めの作成をお勧めします。
(2)遺言書は何度でも書き換えることができる
弁護士が、「遺言書は早く作っておいた方がいいですよ。」「認知症が進行してからでは遅いのですよ。」とアドバイスすると、皆さんは、決まって「でも内容をまだ決められない」「後で気が変わるかもしれない」と答えます。
しかし、遺言書は何度でも書き換えることができます。
公正証書遺言の場合は手数料がかかりますから、何度も書き換えると、その分だけお金もかかってしまいます。
そこで、「後で書き換えるかもしれない」「内容をまだ決められない」という場合は、とりあえずお金のかからない自筆証書遺言を作成しておき、内容が固まってから公正証書遺言を作成してもいいでしょう。
>>遺言書の種類についてはこちら
(3)遺言者の生前の発言をレコーダーやビデオで録音・録画しておく
遺言書を巡って紛争になるのは遺言者が死んだ後ですから、遺言者に法廷で証言してもらうことはできません。病院のカルテなら遺言者の死亡後でも入手することができますが、本人の意思は死亡後には確認しようがありません。
そこで、遺言者に、なぜそのような遺言書を残したいと思ったのかを喋ってもらい、その様子を録音・録画しておくことをお勧めします。この録音・録画が裁判での証拠となります。
喋っている表情や身振りなども分かった方がいいので、音声だけよりはビデオの方がいいでしょう。
ただし、録音・録画があれば必ず有利になるとは言いきれません。
録音・録画の時期や内容について注意が必要ですので、遺言相続問題に詳しい弁護士に相談してから録音・録画することをお勧めします。
(4)親に作成をお願いするのに遠慮しない!
「遺言書を作ってくれなんて親に頼めない」とおっしゃる方も多いです。確かに、死ぬことを想定してのお願いですから、頼みにくいというお気持ちは分かります。
ですが、遠慮しているうちに手遅れになった事例は山ほどあります。
それに、死なない人なんていません。それこそ20代で遺言書を書いておいても構わないのです。
また、遺言書を書いたからといって早死にするわけではなく、むしろ、そうやって死後の準備をきちんとしておくような慎重な方ほど、長生きしやすいという研究結果もあるそうです(参考資料:1500人を80年間追跡調査 米国研究資料「長寿と性格」)。
上大岡法律事務所では、遺言のご相談や遺言書作成について多数のご依頼をいただいております。当事務所の弁護士がヒアリングを通じて依頼者の気持ちを理解して、遺言者の意思を実現するためにはどのような内容にしたらいいのかをじっくり検討いたします。
また、遺言無効の訴訟も数多く経験しており、無効とならないための遺言書の準備方法についてもアドバイスいたします。
上大岡の駅前には公証役場がありますので、打合せから作成まで、すべて上大岡駅近くで済んでしまうのも便利です。
遺言に関して横浜市内の弁護士をお探しの方は、当弁護士事務所にお任せください。まずは、当弁護士事務所までお電話をいただき、「遺言書の相談」とお申しつけください。すでに認知症を患っている方は、その旨もお電話のときにお教えください。
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