せっかく作った自筆証書遺言が無効に

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遺言が無効に!?

 新聞やインターネットなどで遺言作成の重要性を訴える記事をよく目にするようになりました。これらの記事が述べるとおり、残された家族に相続争いなどをさせないよう、元気な時から遺言を作成しておくことは非常に大事なことです。

 もっとも、せっかく作った遺言ですが、死後に無効と判断されてしまうケースが少なくありません。大事な遺族らのために残した遺言が死後に無効になってしまうとは、なんともやりきれない話ですよね。

 こんなことにならないよう、今回は、遺言が無効になってしまうケースとして、自筆証書遺言が無効になるパターンについて紹介したいと思います。

もっとも危ない自筆証書遺言

 遺言には、普通方式による遺言として、①自筆証書遺言、②公正証書遺言、③秘密証書遺言の3つの方式が法律により認められています。このうち、方式違反で無効とされてしまうケースが多いのが①の自筆証書遺言です。

 自筆証書遺言は、公正証書遺言や秘密証書遺言の方式とは異なり、公証人や証人の関与を必要とせず、遺言者だけで作成ができる点で、最も作成が容易な遺言方式といえますが、その手軽さゆえ、要件のうっかりミスや確認不足により、無効とされてしまうケースが最も多い方式なのです。

方式要件を欠く自筆証書遺言の三大パターンとは!?

自筆証書遺言が方式要件を欠くため無効とされてしまうパターンとして多いのは、次の3つです。

  • 1.日付を入れ忘れたもの
  • 2.本文をワープロで打ちこんでしまったもの
  • 3.押印を欠いているもの

この3つのパターンについて判例をまじえて説明いたします。

 自筆証書遺言は・・「作成日付の自書」が必要です

 自筆証書遺言では、日付の自書が要件の一つとされています。このため、「いよいよ危なくなった時に日付を書き入れよう。」などと考え、年月日の欄を空欄のままにしてしまい、そのまま日付を書き入れることなく亡くなってしまうと、遺言は無効になってしまいます。

 また、日付は、何年何月何日まで、しっかり記載する必要があります。例えば、「昭和41年7月吉日」という記載は日の記載としては不正確なので、無効と判断されてしまった判例があります(最判昭和54年5月31日)。

自筆証書遺言は・・「全文の自書」が必要です

 自筆証書遺言による場合、遺言の全文を自書する必要があります。このため、自筆証書遺言をワープロ等で作成してしまうと、自筆証書遺言としては無効になります。

 但し、平成30年の法改正により、自筆証書遺言において相続財産の目録を添付する場合、この目録部分については自書することを要しないとされることになりました。したがって、目録部分についてはワープロ等で作成することが可能です。

自筆証書遺言は・・「押印」が必要です

 自筆証書遺言には印を押す必要があります。押印は実印である必要はなく、認印であっても有効ですし、拇印(指印)でも足りるとされています(最判平成元年2月16日)。

 なお、欧文のサインがあるだけで押印のないヨーロッパ出身者の遺言が有効とされた判例(最判昭和49年12月24日)がありますが、これは欧米人の慣習を考慮したもので、一般の日本人によるサインだけの遺言は無効となると考えられます。

弁護士に相談

 このように、遺言には、ちょっとした要式ミスで無効になってしまう場合があります。大切な遺族のためにきちんとした遺言を残しておきたい場合には、専門家に作成を依頼するのが安心、安全です。遺言作成にぜひ、弁護士を活用してみて下さい。

遺言書作成の弁護士相談については、遺言書の作成を弁護士に依頼すべき理由も併せてご覧ください。

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