あきらめないで!熟慮期間経過後の相続放棄
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このコラムはこんな人にお薦め!
- ◆少し前に親(兄弟)が亡くなったが、全く知らなかった親の借金について請求書・督促状が届いた。
- ◆親とは数十年連絡をとっておらず、生きているか亡くなっているのかも分からない。突然、巨額の親の借金を請求されるのが怖い。
突然の「借金を払ってください」
誰もが人生で1度や2度は経験することになる「相続」ですが、近年、核家族化が進み、何年も連絡を取っていなかった親兄弟が亡くなって初めて相続問題に直面するという方も多いのではないでしょうか。
このような場合、亡くなった親兄弟(被相続人といいます)がどの程度の遺産を残したのか全く分からないため、相続問題をどう対処すれば良いのか右往左往しているうちに、時間が経過してしまうということはよくあることです。
そして、被相続人が亡くなってから半年ほど経過したある日突然、銀行や信用保証協会から「被相続人の借金を払ってください」との書面が届き、借金の存在が発覚したケースについて相談を受けることが少なからずあります。
民法915条1項
「相続人は、自己のために相続の開始があったことを知った時から三箇月以内に、相続について、単純若しくは限定の承認又は放棄をしなければならない。」
民法921条2号
「次に掲げる場合には、相続人は、単純承認をしたものとみなす。
二 相続人が第九百十五条第一項の期間内に限定承認又は相続の放棄をしなかったとき。」
これら民法の規定によると、被相続人が亡くなったことを知った時から3か月以内に相続放棄(または限定承認)をしないと、「相続の単純承認」=すなわち、被相続人のプラス財産もマイナス財産も全て相続したことになってしまいそうです。
そうすると、被相続人と長く連絡を取っていなかったなどの理由により、被相続人がどの程度の遺産(プラス財産、マイナス財産)を残したのか全く分からないため、相続放棄等を行わないまま、3か月を経過させてしまった相続人は、後から判明した被相続人の巨額の債務を必ず支払わなくてはならない羽目になってしまうのでしょうか?
答えは、「No」です。
借金を知って3か月以内なら相続放棄が認められる可能性あり
相続放棄をしないまま3か月経過してしまった場合でも、被相続人の借金等を知った時から3か月以内であれば、相続放棄が認められる可能性があります。
最高裁昭和59年4月27日判例(抜粋)
相続放棄の熟慮期間は、原則として、相続人が相続開始の原因事実および自己が法律上相続人となった事実を知った時から起算すべきものであるが、相続人が、右各事実を知った場合であっても、右各事実を知った時から三か月以内に相続放棄をしなかったのが、被相続人に相続財産が全く存在しないと信じたためであり、かつ、被相続人の生活歴、被相続人と相続人との間の交際状態その他諸般の状況からみて当該相続人に対し相続財産の有無の調査を期待することが著しく困難な事情があって、相続人において右のように信ずるについて相当な理由があると認められるときには、熟慮期間は相続人が相続財産の全部又は一部の存在を認識した時又は通常これを認識しうべき時から起算すべきものと解するのが相当である。(最高裁判例集「昭和57(オ)82」)
- (1)被相続人に相続財産が全く存在しないと信じ、
- (2)そのように信じたことに相当の理由があるとき
には、熟慮期間経過後であっても相続放棄が認められるとしているのです。
実務上、この判例の基準に該当するため、熟慮期間3か月経過後であっても、相続放棄が認められるケースは非常に多く見受けられます。
上記基準「(1)被相続人に相続財産が全く存在しないと信じ」は、文字どおり読むと「被相続人にプラスの財産もマイナスの財産も全くないと信じた場合」しか救済されないようにも読めますが、
- ・多少のプラス財産が残されていることは知っていた
- ・クレジットカードの少額の債務が残されていることは知っていた
- ・借地上に被相続人名義の廃屋が残されていたことは知っていた
などであっても、熟慮期間経過後に高額の債務の存在を初めて知った場合には相続放棄が認められているケースは少なからず存在します。
このため、熟慮期間経過後に被相続人名義の高額の借金が発覚した場合であっても、あきらめずに、まずは弁護士に相談されることをお勧めします。
上大岡法律事務所では、相続後に借金が発覚したケースでも相続放棄の決定を得た多数の解決実績がありますので、お気軽にご相談ください。
相続放棄の弁護士相談については、こちらのページをご覧ください。
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