(相続)遺留分侵害額請求で相手弁護士の提示金額より増額して合意した事案
当事務所に相談した経緯
父親が死亡し、相続人は長男と次男の2人。
父は公正証書遺言を残しており、長男にとって有利な内容であった。
相続の内容に納得のいかない次男は、当初は自分で長男の弁護士と交渉をしていたが、途中で当事務所の弁護士に依頼した。
当事務所の対応
1 内容証明郵便の郵送
遺留分侵害額請求は相続の開始を知った時から1年以内にしなければならず、交渉している最中に1年を経過してしまう可能性もあるので、長男に対し、内容証明郵便を郵送した。
2 対象となる遺産の検討と評価額の計算
長男の弁護士から提示された遺産の中身と評価額を検討した。
まず、特別受益として遺産額に計上すべき父親から長男への生前贈与が計上されていなかった。
また、不動産は、相続税の申告の際には路線価・固定資産税評価額で評価するものの、遺産分割においては時価で評価するのが原則である。
ところが、長男の弁護士は、固定資産税評価額(時価の6~7割)で計算していた。
これらの点から、長男の弁護士が提案していた遺留分は、適正な相続金額よりも低く計算されていた。
にもかかわらず、長男の弁護士は、次男に対し、「この金額で示談できずに調停になった場合は白紙撤回します」と、あたかも適正額よりも高い金額を提示しているかのような説明をしていた。
相手の弁護士との交渉結果
相手の弁護士と交渉した結果、不動産業については時価の査定をとって金額を修正し、また生前贈与についても特別受益として遺産額に計上することができた。
長男の弁護士は当初は争っていたものの、最終的には、受任前の金額よりも増額した金額で合意することができた。
弁護士の一言
まず、遺留分は、「相続の開始及び減殺すべき贈与又は遺贈があったことを知った時」から1年以内に請求しないと権利が消滅してしまうのですが、請求したことが証拠として残るように内容証明郵便を発送しておく必要があるのでご注意ください。そういったことからも、早めに弁護士に相談することが大事です。
この期限内に請求すれば、素人の方が交渉しても払ってもらえる場合もあると思いますが、適正な金額なのかどうかについて判断できないという場合もあると思います。
今回の事案では、相手の弁護士の言うことをそのまま信じて合意していたら、長男にとってかなり有利な条件で合意していたことになっていました。慌てずに弁護士に相談することで、ご依頼者である次男は正当な額による相続を受けることができました。
慌てて合意したら、「実は適正な金額よりもとても低い金額だった」、ということのないよう、一度は弁護士にご相談されることをお勧めします。
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