遺言と遺留分

平成27年1月15日号掲載
平成29年9月29日追記

Q
 私には離婚歴があり、前妻との間に子どもがいるのですが、できれば今の妻とその子どもに全財産を相続させたいと思っています。
 ただし、今の妻や子どもが、前妻の子どもとの間で相続紛争になるのは避けてやりたいのですが、どうしたらよいでしょうか。
 
A
 今の妻をA、その妻との子どもをB、前妻との子どもをCとして説明します。
 法定相続分はAが2分の1、BとCが各4分の1になります。
 Cが相続放棄した場合、または、ABCの間で、AとBが全財産を相続する旨の合意が成立した場合には、AとBがあなたの全財産を相続することができます。
 
 しかし、Cが相続放棄にも合意にも応じないという場合も当然予想されます。
 この場合に、AとBにだけ全財産を相続させたいのであれば、その旨の遺言を作成する必要があります。
 
 ところが、この遺言があっても、確実に全財産をAとBにだけ相続させることはできません。
 Cは「遺留分」を請求することができるからです。本来自分の財産をどう処分しようが勝手ですが、相続においては、財産の一部について自由な処分が許されておらず、兄弟姉妹以外の相続人は、遺産のうち一定割合を必ず相続できるという仕組みになっているのです。
 
 Cの遺留分は8分の1です。
 したがって、あなたが、AとBにだけ相続させるとの遺言をしても、CがAやBに遺留分を請求すれば、あなたの遺産うち8分の1はCが取得することになってしまいます。
 そのため、あなたの残した遺言により、遺留分を巡ってABとCとの間で紛争となることが予想されます。

このような紛争を未然に防止するためには、次のような方法が考えられます。

  • (1)遺留分に相当する財産をCに相続させ、残りはABに相続させるとの遺言をする。
     このような遺言をしておけば、ABがCから遺留分を請求されることはありません。
  • (2)遺留分相当額をあなたがCに生前贈与しておく。
     この場合も同様、CはABに遺留分を請求することはできないので、紛争を回避することができます。Cが了解するなら、遺留分放棄の手続をしてもらう。
     遺留分放棄はあなたの生前にすることができます。あなた自身でCを説得して放棄の手続をとってもらえば、あなたの死後、ABがCとトラブルにならなくて済みます。
     なお、遺留分放棄の手続は家庭裁判所に申立てをすることが必要です。
 以上のような対策を講じることにより、ABに多くの財産を相続させ、相続紛争も未然に防止することが可能になります。
 実際のケースでは、いろいろ複雑な事情がある可能性があるため、一度弁護士に相談することをお勧めします。
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