内縁の妻に遺産相続権や財産分与請求が認められるか?
令和4年1月12日掲載
私は内縁の妻で事実婚の状態ですが、夫が高齢で相続のことが気になりました。内縁の妻は、夫の遺産を相続できるのでしょうか?
内縁とは?事実婚とは?
「内縁の妻」という言葉がありますが、内縁とは,婚姻の社会的実体はあるが婚姻届の出されていない男女の関係をいいます。内縁は,事実婚と呼ばれる場合もあります。
事実婚は、婚姻の社会的実体はあるが婚姻届の出されていない男女関係です。法律婚は、婚姻届を役所に提出して婚姻関係となったものです。
内縁と同棲の違い
よく,「内縁と同棲はどう違うのか?」と聞かれることがあります。
同棲は,単に男女が共同生活をしていることを言いますが,これに対して,内縁は,(1)婚姻意思があること,(2)夫婦共同生活の実体があることが必要です。
したがって,恋人同士が婚姻意思がなく単に一緒に暮らしている状態や,家計は別々で協力関係も乏しい状態では内縁とは言えません。
内縁の効果
内縁関係には,夫婦共同生活の実体に関わる民法の規定が類推適用されます。
類推適用とは、直接定められた法規がない場合に、もっとも類似した法規を適用することです。
具体的には,同居協力義務(民法752条),婚姻費用分担義務(760条),日常家事債務の連帯責任(761条),貞操義務(770条)などの規定が適用されます。
他方で,内縁関係には相続に関する規定は適用されません。これが法律婚と事実婚の大きな違いです。
内縁の解消
婚姻届を出した法律婚の場合,婚姻関係を解消したいと考えた場合には,離婚届の提出等の法定された手続きをとる必要があります。
これに対して,内縁はもともと(1)当事者の意思と,(2)夫婦共同生活の実体から認められるものであるため,(1)または(2)が消滅すれば,内縁関係は解消されることになります。
具体的には,(1)当事者の合意または一方の解消の意思表示が認められる場合,もしくは,(2)当事者が別居した場合,内縁関係は解消されます。
内縁解消と財産分与
上記のとおり,内縁関係には,夫婦共同生活の実体に関わる民法の規定が類推適用されますので,夫婦共同生活の実体が解消される「内縁の解消」の際にも,離婚の場合と同じく財産分与の規定(民法768条)が類推適用されます。
これにより,内縁を解消した場合,内縁期間中に形成した共同財産については,双方の寄与度に応じて(特別の事情がない限り2分の1)分け合うことになります。
内縁が死別により終了した場合
なお,内縁関係が死別により終了した場合,財産分与の規定が類推適用されないことには注意が必要です。
上述したとおり,内縁関係には相続に関する規定は適用されません。亡くなった方の財産については相続の規定により相続人に帰属することになり,内縁関係にあった配偶者は、何年も内縁関係にあっても遺産を取得できません。
このため,内縁関係にある夫婦が,自分の死後に配偶者に財産を残したいと考えた場合には,遺言書により遺贈をしておくなどの相続対策をしておくことが必要になります。
「内縁の妻に相続したい」とお考えの方は、上大岡法律事務所までご相談ください。
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