特別受益の持ち戻しとは?

特別受益とは

 特別受益とは、共同相続人が被相続人から遺贈を受けたり、生前に生計の資本等のために贈与を受けたりした場合、この遺贈や贈与のことを特別受益といいます。

特別受益の持戻しとは

 特別受益を受けた相続人がいる場合、相続に際して、この相続人が他の相続人と同じ相続分を受けるとなると不公平になります。このため、民法は、特別受益を相続分の前渡しと見て、計算上、特別受益を相続財産に算入して相続分を算定することにしています。

 特別受益を相続分算定の基礎に算入する計算上の扱いを「特別受益の持戻し」といいます。

 持戻し計算により相続財産を算定したうえで、特別受益を得た相続人の相続分から特別受益分を差し引いて具体的な相続分を算定することになるので、相続人間の公平が図られることになります。

特別受益に時効はあるか?

 特別受益には時効という概念はありません。

 このため、遺産分割協議の場面においては、数十年前の生前贈与であっても、特別受益の持戻しが行われます。

 もっとも、これと区別して考えなくてはならないのが、遺留分侵害額請求の場面です。

 令和元年の民法改正前までは、遺留分を計算する場面においても、期間制限がなく特別受益を得ていた相続人がいる場合には持戻しが行われていました。

 しかし、令和元年の民法改正以降は、遺留分侵害額請求の場面では、持ち戻されるのは遺贈及び相続開始前10年の期間に行われた生前贈与に限られることになりました(民法第1048条後段)。

持戻し免除の意思表示について

 特別受益の持戻しは、相続人間の公平を維持するために設けられた制度ですが、被相続人の意思表示によって、特別受益者の受益分の持戻しを免除することができる場合があります。

 被相続人が、特定の相続人に対して特別の取り分を与えたいと考えた場合には、相続開始時までに、特別受益を遺産分割において持ち戻す必要がない旨を明示又は黙示に意思表示しておくことにより、持戻し計算を排除することが可能になります。

 もっとも、持戻し免除の意思表示によっても、他の相続人の遺留分は侵害できないとされていますので、注意が必要です。

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